事務所名変更にあたって

Posted on Jun 27, 2017 in 日々について

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事務所名を変更しました。

「岩田厚建築設計事務所」

ど真ん中です。

実は旧名の「アツシイワタデザイン」は、ほとんど勢いだけで決めた経緯があります。
発足当初、まだ一級建築士事務所の開設をしていなかったこともあり「まずはデザイン事務所でいこう。」と考えました。
そこで「イワタ＋デザイン」なら海外でも通用するのでいいだろうと調べると、岩田デザインさんも、イワタデザインさんも既に存在していることがわかりました。
それならばもう下の名前もくっつけて「アツシイワタデザイン」にしよう。
そうしよう。
と、これだけでした。
当時の自分は「重要なのはアウトプットで名前は関係ない。」と信じていたのであまり深く気にとめませんでしたが、振り返るとかなり後ろ向きな決め方でした。

そのアツシイワタデザインとして業務を続け６年近くの時間が経ちました。
この間、おかげさまで順調に仕事も増え、日々確かな手応えを感じながら活動することができました。
一方で、自分はやはり建築の設計にこだわって仕事をしていきたいと強く思うようになりました。

踏み込めば踏み込むほど建築は面白いものだということ。
「日本」を突き詰めるからこそ「世界」で勝負できる可能性があるということ。
できる限りトレンドや流行からは距離を置いた位置にいたいということ。
建物が好きだということ。
本道を行きたいということ。
建築には感動があるということ。
そして、なんとかこの感動を伝えられないかということ。

このような事を考えながら毎日を過ごすようになりました。
そして事務所名に「建築設計」と入っていないことに対するズレも徐々に感じるようになっていました。

建築設計には様々なアプローチのもと幾通りもの答えの出し方があります。
その中でも近年は方法論にフォーカスした設計や施工手法の新しい枠組み作りへと業界の考え方が急速に移行しています。
これはハードもソフトも含めての傾向で、例えばビッグデータ利用、AI、ストック活用、BIM, デジタルファブリケーション、地方移住、コミュニティ参加型計画など、例を挙げればきりがありません。
実は「どうすれば固有の最適解をシステム化できるか。」という議論は新しいものではなく、建築業界が戦後60年以上も抱え続けている大きな課題です。(海外では100年近く。)
そして今、ようやく技術と時代がこのテーマに追いついてきたところだと思います。

ただ、自分はどうしても「枠」よりも「軸」の方に興味があります。
人生は短く、できることには限界があり、能力も限られているので。
本当にこだわりを持てるフィールドで勝負したいと思います。
精一杯の知識と技術と想像力と思い入れを持って、お客さんの置かれた状況で、目の前にある条件で、素晴らしい建築を設計できる建築家は必要だと思います。
毎回毎回ベストを尽くすのは簡単なようでいてとても難しい。
だから陶芸家のような建築家がいてもいいと思います。

そしてもうひとつ。
「現代における日本建築とは何か。」
かつて前川國男が生涯を通して探求し続けたこのテーマは、いまだ未解決のままです。
ところが今日の日本の建築・建設業界は、この当たり前の「問い」を完全に置き去りにし、グローバル化とシステム化へと突き進んでいます。
この先にあるのは、もはや建築や都市の極端な均質化でしかありません。
偉そうなことは言えませんが「和モダン」のような安易な言葉があふれる中、もう一度説得力を持った現代の日本建築を考察する必要があると思います。
今であればまだギリギリ間に合うはずです。

「建築設計事務所」というと「なんだ普通じゃん。」と思われるかもしれませんが。
過去、数々の建築家たちがこの「建築設計事務所」の看板を背負ってきました。
だから今回の事務所名変更は今後への覚悟であり決意表明です。

これからも試行錯誤を重ね、ひとつひとつ経験と思いを積み上げていく所存です。
いつかその前進が日本の未来と誰かの幸せへと繋がるのであればとても嬉しく思います。

新たなスタートです。
岩田厚建築設計事務所をどうぞよろしくお願いいたします。

最後に。
ここ２年ほどホームページを更新する余裕がありませんでしたので、その間手がけたプロジェクトをご紹介します。
（詳細は改めてアップ予定です。）

♦　T・O邸新築工事　2017年　専用住宅　木造平屋　90㎡