懐
「日経に書いてあることを鵜呑みにしちゃいけない、だからそのために読むんだ。」
父はそう言いながら、もう何十年も日経を読み続けています。
「自分が支持する政党の真逆の政治思想を持った政党の機関誌も読みなさい。」
こちらはロンドン時代に働いていた建築事務所のボスの一言。
若い頃、これは「相手を知る」ためだとずっと思っていましたが、最近はもう一歩踏み込んだ見方ができるようになりました。
結局、世の中には、自分とは違った価値観を持つ人が必ずいるわけで。
やはりその全ての人と理解し合うのは難しい。
だから、その人間の多様性を受け入れる懐の深さを持てということなんじゃないかと。
(もちろんなんでもかんでも受け入れろと言っているわけではなく。)
その上で、自分の立ち位置を見つめ直し、意見を整理し、行動に移せということではないかと。
時には全く違った意見を持つ人と衝突することもあると思います。
でも、それだけのことで、相手を頭ごなしに否定する必要は無いということ。
今はサッカーのW杯が始まったばかり。
当然、スポーツに興味のない人、サッカーに興味のない人、たくさんいると思います。
でもその価値観だけで、スポーツの全てを否定するようなことは言って欲しくない。
代表がたった1試合不甲斐ない試合をしただけで、スポーツをクズ扱いするような視野の狭い発言は控えて欲しい。
別にこれはスポーツに限らず、全てにおいてです。
もちろん建築デザインも。
元ラグビー日本代表監督・早稲田大学ラグビー部監督の故・大西鐵之祐は
「戦争をしないためにラグビーをするんだよ。」
という言葉を残しました。
本気で高みを目指した人にしかわからない肉体と精神の境地がスポーツにはあります。
そして、スポーツは紛れも無い文化なのだと僕は信じます。
最後に。
下のリンクは高校時代のラグビー部のコーチ、スポーツライターの藤島大氏の文章。
3年間、ほぼ毎日練習の指導をしていただきました。
当時はただただしんどいだけでしたが、それは自分の根幹を形成した、かけがえのない瞬間の積み重ねでもありました。
「ジャスティスよりもフェアネスの建築を。」
数年前に贈っていただいた言葉です。