解体
リノベーションや建て替えでまず必要となる解体工事。
職人さんたちは手際よく家を解体していきます。
当然作業にためらいはありません。
こちらはというと、その様子を目の当たりにしてとても心が痛みます。
家を壊されることに対する本能的な拒否反応にも襲われます。
一方で「今までどうもありがとう。」という感謝の気持ちも湧き上がり、後戻りできない不安と新居への期待が入り混じります。
言葉では表現しにくい少々不安定で複雑な心持ちです。
そして家はあっという間に工事現場へと変化します。
「解体作業は見に来ない方がいいですよ。」という設計士さんは多いです。
以前は僕も同じ考え方でした。
しかし今はむしろ施主の方にも解体現場に立ち会って欲しいと思うようになりました。
(もちろん安全な場所から遠目に見てもらうということですが。)
バラバラになった壁や床を見ると、「家って何?」と少し哲学的なことを考えたりします。
同時に、廃材の山の前で直感的に「もの」の大切さを感じることができます。
この物件は延床80平米程度の工事でしたが、2tトラック4台分の解体部材が産業廃棄物として処理されました。
それは驚くほどの量で、ものを買うこと、使うこと、捨てることに対し、もう一歩踏み込んで考えなくてはならないと感じずにはいられませんでした。
解体という作業を通して生まれる思考や感情は、新しい家とより深く向き合う姿勢へと繋がるのではと思います。
施主の立場を体験して初めてわかったことです。