判断を下すこと

  Posted on Sep 27, 2017 in TO邸, リノベーション, 建築考察

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先日、一部竣工写真をアップしたTO邸は、当初、既存住宅のフルリノベーションという計画でした。その建物は築60年の木造平屋住宅。ご家族の歴史を辿ることのできる空間は、時間の流れの深みを感じる特別な空気感を携えていました。その特徴を最大限活かしつつ、現代の建築へと蘇らせるデザインが僕に求められていました。

半年以上の設計期間の後に、いよいよ工事がはじまったのが昨年8月。ところが、いざ解体工事を進めると、ほとんどの構造材は交換が必要、土台はあちらこちらで細切れ、基礎の全く無い部位が多く出てくるなど、構造的な問題が次々と明らかになり、とても予算内で手を入れられるような状態ではないことがわかりました。各所の部分的な破壊調査も行い、事前にできる準備はすべて行ったつもりでしたが、実際には想像以上に建物の状態が悪かったということです。

振り返ってみると、その隠れた問題点を予測できるような症状が建物にも敷地にも確かに存在していました。しかしながら当時の僕はそれらを正確に拾い上げることができませんでした。もし、これらの小さな兆候を総合的に判断することができていたならば、おそらく2手3手、手前で建て替えの判断を下すことができたように思います。

また、ハードルは高いながらも粘り強く模索を続ければ必ず方法はあると考えていましたが、結局はその姿勢が裏目に出てしまったことも否定できません。学生時代に大変お世話になったお客様(大学ラグビー部の大先輩)からのご依頼ということもあり、既存建物に過度の思い入れを持ってしまったのも事実です。その結果、冷静に状況を把握できなくなっていた部分もあったと思います。

これはまさに建築士としての見通しの甘さを痛感した出来事でした。その一方で、大変なご迷惑をおかしておきながらこのようなことを申し上げていいのかわかりませんが(先輩お許しください…)、この経験から木造リノベーションの際に押さえるべきポイントとリスクを一度に全て勉強させていただいた気がします。

TO邸は急遽、建て替え新築工事へとプロジェクトの舵を切ることになりましたが、最終的には新しいご自宅を大変気に入ってくださり、なんとか最低限の責任だけは果たせたと思っています。

「この状態ではリノベーションは無理です。建て替えに変更させてください。」とご報告した当日のことを思い出すと、いまだに血の気が引きます。そして、その僕の言葉を、「そうか。壊してみないとわからないって言ってたもんな。」と大きく笑いながら受け止めてくださったことが忘れられません。

 

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