2022年を振り返って

  Posted on Dec 31, 2022 in 日々について
大晦日も相変わらず事務所にいます。

今年もあと数時間で終わりです。

昨日は真面目な文章だったので、今日は肩の力を抜いて2022年を振り返ります。
2日連続で投稿するのは初めてです。
なぜかというと、昨日の伊勢神宮についての文章がどうしてもまとまらず、押しに押してしまったから。
でも、明日になってしまっては、もう今年を振り返る気にはなれません。
だから無理矢理ねじ込みます。
これは日本人特有の感覚ですね。

ちなみにヨーロッパでは1月もクリスマス飾りを街のあちこちで見かけ、年越しパーティーはあるものの、なんとなくグラデーション的に年が明けていきます。

今調べてみたところ、初めてのブログ投稿が2012年の6月7日でした。
知らぬ間に10年と半年が経っていました。(そりゃ歳もとるわけです。)
今回が97投稿目。
とは言え、正直なところ1年間ほとんど更新しなかったこともあり、10年分の内容が伴っているのかと言えば、かなり怪しいです。

2022年もいろいろなことがありました。
コロナの波は過ぎたようで完全に去ったわけでもなく、なんだか一年の出来事の時系列が頭の中で飛び散らかっています。
きっと同じような方がたくさんいらっしゃるのだと思います。

個人的に今年一番の出来事と言えば、やはり大学で教える機会をいただいたことでした。
サバティカル休暇の先生の代打として、東京都立大学システムデザイン学部インダストリアルアート学科の3年生の空間デザイン実習・演習の前期の授業を担当しました。
最初はこのとても長い学部・学科名に驚きました。

これまで何度もレクチャーを担当したことはありましたが、大学で教えるのは初めての経験で、履修してくれたみんなには多くの迷惑をかけてしまったと思いますが、半年間(正確には4ヶ月半)、とにかくデザイナーとしての伸び代を伸ばしてあげるにはどうすればよいだろう、ということを考え続けました。
できるだけ多くの種を蒔いてあげようと。
目の前の設計課題には役立たなくとも、ものづくりに携わる人間として重要な話は必ず紹介するようにしました。
だから、10年後、15年後に、「そういえば岩田があんなこと言っていたな。」と、ふと思い出してくれることがあれば嬉しく思います。

欲を言えば、授業で触れた内容の全てが、建築というジャンルを通して実は強く繋がっているのだと、いつか気づいてもらえたらと思いますが、自分のことを振り返れば、大学の授業で記憶に残っている内容など、残念ながらひとつもありません。
そもそもほとんど授業に出なかったので、記憶に残りようもないという見方もありますが…
(今だに「このままでは単位が足りなくて卒業できない。」という夢を見ます。)

僕は建築デザインで最も大切なのは”感動”だと思っています。
もちろんその感動には様々な種類があり、造形が素晴らしい建築が生み出す感動もあれば、心から使いやすいと感じる建築から滲み出る感動もあります。
建築の背景にある物語が心に響く場合もあると思います。
でも、デザインをする側から見ると、どのような形であれ”感動”までたどり着くのはとても難しい。
だからこそ、自分感性を信じ、自分の頭で考え、手を動かすことがとても大切です。
そして、その感性と思考を鍛えるために、好奇心を持って勉強を続けて欲しいと思います。
借り物のデザインでは絶対に感動は生まれないので。

でも、これはいつも自分自身にも言い聞かせていることです。

 

左手が燃えてしまったMackintosh Building 右手が建築学科の建物

2002年、グラスゴーに渡って最初の冬のことでした。
学校に行くと先生に、“crisp air, isn’t it?”と話しかけられました。
“crisp air”とは、透明度の高い冬のパリっとした空気をイメージしてもらえればと思いますが(実は直訳そのままですね)、でも当時、僕はその意味がピンと来なかったんです。
すると先生は、突然自分の頬をパン!と跳ねるように叩いて音をさせて、「こんな感じ。」と、その朝の空気の質感を身振り手ぶりで一生懸命教えてくれました。

長く生きていると、案外とそういうことの方が記憶に残り、その後の人生の糧になったりもします。
その先生はAAスクールの出身で、僕がその後AAに進んだのも、やっぱりどこかで影響を受けていたのだと思います。(Tony, お元気ですか?)

ひとつの単語の意味を伝えるだけでも、間違いなく情熱は響くんですね。
授業後に学生アンケートの結果を受け取ったのですが、少なくとも熱意だけは皆に伝わったようでとてもほっとしました。

 

さて、まだ詳しくはお話できませんが、本業の設計では京都で町屋の改修を2件手がけています。
来年、少しずつ詳細をアップしていきますので、是非、ホームページやインスタグラムのチェックをお願いします。

残念ながら3年連続で喪中となってしまい、新年のご挨拶は控えさせていただきますが、本年も大変お世話になりました。

みなさまどうぞ良いお年をお迎えください。