懐

  Posted on Jun 16, 2014 in 日々について

「日経に書いてあることを鵜呑みにしちゃいけない、だからそのために読むんだ。」

父はそう言いながら、もう何十年も日経を読み続けています。

 

「自分が支持する政党の真逆の政治思想を持った政党の機関誌も読みなさい。」

こちらはロンドン時代に働いていた建築事務所のボスの一言です。

 

若い頃、これは「相手を知る」ためだとずっと思っていましたが、最近はもう一歩踏み込んだ見方をするようになりました。

 

結局、世の中には、自分とは違った価値観を持つ人が必ずいます。

現実はそうあるべきです。

当然、全ての人たちと理解し合うことはできません。

ただ、どんなときでも、人間や考え方、社会の多様性を認識する懐の深さを持つことはできるはずです。

もちろんなんでもかんでも受け入れろということではありません。

その上で、自分の立ち位置を見つめ直し、意見を整理し、行動に移せということではないかと思います。

 

時には全く違った意見を持つ人と衝突することもあるでしょう。

それでも、たったそれだけのことで、相手を頭ごなしに否定する必要は無いはずです。

 

今はサッカーのW杯が始まったばかりです。

当然、スポーツに興味のない人、サッカーに興味のない人、たくさんいると思います。

でもその価値観だけで、スポーツの全体を否定するようなことは言って欲しくありません。

 

これはスポーツに限らず、全てにおいてです。

もちろん建築デザインも含まれます。

 

元ラグビー日本代表監督・早稲田大学ラグビー部監督の故・大西鐵之祐は

「戦争をしないためにラグビーをするんだ。」

という言葉を残しました。

激しく肉体をぶつけ合うギリギリの戦いの中でも、人間として決して越えてはならない一線の判断を、頭ではなく身体で会得するということです。

 

本気で高みを目指したアスリートにしかわからない肉体と精神の境地があります。

スポーツは紛れもない人間文化だと僕は信じています。

 

リンクは高校時代のラグビー部のコーチ、スポーツライターの藤島大氏の文章です。

大さんには入部から引退までの3年近く、ほぼ毎日練習の指導をしてもらいました。

振り返ると辛かった思い出も多く蘇りますが、それは自分の根幹を形成した、かけがえのない瞬間の積み重ねでもありました。

 

「ジャスティスよりもフェアネスの建築を。」

 

数年前に贈っていただいた言葉です。

 

「存分に走れ」藤島 大