歴史の先端
ロンドンで借りていた部屋からの眺めです。昔のデータを探している際に見つけました。
夕日に映える窓の汚れはさておき、ヨーロッパの街はこのような何気ない景色からも、自分自身の存在する世界が、脈々と連続してきた歴史の先端にしっかりと位置しているということを肌で感じさせてくれます。
戦争で一度焼けてしまっただけでなく、スクラップ・アンド・ビルドが繰り返される東京の街並みに、同様の感覚をそのまま求めることはもはや現実的ではありませんが、現代建築においても、歴史性や地域性をないがしろにした設計は、どうしても流行り廃りの枠の中でしか判断できず、あっという間に消費されてしまうように思います。
歴史性や地域性を大切にするということは、伝統的な建築形態に固執することではありません。最終的な建築表現がどのようなものであれ、日本の建築家で、僕がその建築と歴史との関係を特に強く感じるのが、前川國男や鈴木了二氏、そしてSANAAによる建築です。
一方、海外においては、歴史性や地域性に重きを置かない設計手法を持つ建築家の方がむしろ稀であるように思います。
文化は歴史の積み重ねであることを考えれば、そもそも建築のデザインに消費期限などあってはならないはずです。
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前川國男「埼玉県立歴史と民俗の博物館」1971年
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鈴木了二「金比羅宮 緑黛殿」2004年
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SANAA「金沢21世紀美術館」2004年
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ル・コルビュジエ「ラ・トゥーレット修道院」1960年