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両親の家のリノベーションです。

自分の育った家ということもあり、特別な思い入れを持ってプロジェクトに臨みました。多摩ニュータウン、タウンハウスの一住戸です。現在、竣工から30年程が経っています。建設当時、この敷地周辺は住宅・都市整備公団主導のもと坂倉建築研究所、根津建築事務所が共同で計画及び設計を行いました。2階建て鉄筋コンクリート壁式構造の本物件は、南北方向に主な開口部があり東西は隣住戸との境界壁に挟まれたプランとなっています。

坂倉建築研究所の創設者である坂倉準三氏は前川國男氏、吉阪隆正氏らと共にル・コルビジェに師事した3人の日本人建築家のうちの一人で、渋谷ヒカリエの前身である東急文化会館などを手がけた著名な建築家です。竣工時、坂倉氏はすでに亡くなられていましたが、ランドスケープを巧みに絡めながら中庭を共有する住棟配置など、ヨーロッパでの郊外開発を目の当たりにしてきた氏の影響がいまだ強く残されていた時期の計画だったのではと考えます。

今回のリノベーションは、退職後の生活を迎えようとしている両親のために行ったものです。いま一度全ての生活項目を見直し「この先の50年」をコンセプトに設計に取り組みました。そして意匠性や機能性だけでなく、環境負荷の低減などこれからの建築に求められる課題のひとつひとつを検討し、包括的にデザインをすすめるようにしました。

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beforeEXISTING_1_480EXISTING_2_480EXISTING_3_480EXISTING_5_480

afterAFTER_1_480 AFTER_2_480 AFTER_3_480AFTER_6_480

まず、1階は完全にバリアフリーとしています。リビング・ダイニングには対面式キッチンを導入し、料理をしながら家族との会話を楽しむことができるようにしました。床材やキッチン戸棚には無垢のメープル材を使用しています。経年変化の美しいこの材は時間をかけて深い飴色へと変化していくはずです。洗面室とトイレは同室にまとめ浴室の隣に配置、広くなった間取りに加え、採光、換気の条件も改善しました。この計画では将来必要とあればリビングを寝室とし、2階にあがらずとも1階のみで生活が完結できるようにしています。

2階は和室、父の書斎および寝室です。既存の天井を取り除き、最大3.3mの天井高を持つ伸びやかで気持ちのよい空間となりました。各部屋とも必ず南北方向に風の通り道を設ける計画とし、夏季にも十分な自然換気を行えるようにしています。照明は家全体を通してLEDと白熱灯をバランス良く配置し、調光機能を加えることで生活スタイルに合った明かりをコントロール出来るようにしました。

夏の暑さ、そして冬の寒さ対策として、床下、壁、天井と全て内側から高断熱性能を持つ吹付け断熱材で覆っています。窓ガラスも高断熱ガラスへと交換し、家全体のエネルギー効率は大きく向上、より環境負荷の小さい家となりました。今回使用した断熱ガラスは0.2mmの真空層が2枚のガラス板の間に設けてあり、高断熱性能と薄さを併せ持ち、旧型のサッシ枠にはめ込むことができるものです。LED照明や吹付け断熱材もそうですが、技術が進歩したことで初めて可能となった工事も多くありました。

魅力的なリフォーム手法をニュータウンで確立することは、その繰り返し可能な側面に大きな強みを持ちます。本プロジェクトは単に両親の家のリノベーションというだけでなく、旧住宅公団が抱える全国46万戸の団地ストックに対するモデルケースとなり、若い世代を再びニュータウンに呼び戻すきっかけになればと考えています。延命的なリフォームに留まらず、根本を見直し手を加えることで、全く新しい家に生まれ変わらせることができたと考えています。私自身も施主と設計士という二つの立場を同時に経験することで、今後につながる大きな収穫を得ることができました。

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~2014.11.25追記~

本プロジェクトは、JERCO リフォームデザインコンテスト2014全国大会にて、「戸建部門全国優秀賞」を受賞、以下の講評をいただきました。

「築30年超のタウンハウスのリフォームである。RC壁式構造は構造的制約が大きい。これに対し、壁の制約を感じさせない巧みな改修を施している。出色は、従来壁付きキッチンだったものをL型の対面式キッチンにしたことである。これによりLDK全体が魅力的な空間に変わった。1階の完全バリアフリー化、床の無垢材化、断熱性の向上による省エネと居住性の向上など、全体にわたってバランスのとれたリフォームである。」

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(Photo : Ken Yagishita / March 2012 – September 2013)