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「非日常への備えをわかりやすく日常に落とし込むこと」 をアイディアとした提案です。

東日本大震災から4年以上の時が経ち、防災訓練は定期的に行われている反面、防災意識は徐々に低下してきているのが現状です。特に、来るか来ないかわからない非日常に個人で備えるのは容易ではなく、備蓄物の用意はむしろ重荷のように考えられています。行政による地域単位の備蓄庫は整備されていますが、詰め込み型倉庫の存在は依然日常生活からは離れたものであり、防災意識向上への繋がりはあまり期待できません。そこで、備蓄物の管理という点に着目し、改めて防災への関心を高める、コミュニティーのための家を提案します。

「敬遠されがちなものをあえてディスプレーとして再構築すること」

「よりシンプルに、よりわかりやすく」

まずは日常における防災意識向上のために、備蓄物の種類や量を可視化して住民全員で日々の生活の中で共有できるデザインが必要だと考えます。そこで備蓄の家では、備蓄棚をデザイン性豊かに設置し、備蓄物はまるで店舗のディスプレーであるかのように配置されます。カフェ、ネットスペース、読書スペース、子供のレクリエーションスペース、ミーティングスペースなどを配置し、自然と防災に対する知識を深めることができる空間として地域に根付いていくことを目指しました。これにより、例えば、トイレットペーパーの数量を視覚化、何人に対して何日分の備えがあるのかを目に見える形にできます。また工具は何種類置いてあるのかなど、紙に印刷されたチェックボックスを点検していくよりも、ずっと効果的に防災意識を高めることができます。また視覚化された備品は教育へも有功であると考えます。

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「いつもの場所が、約束の場所」

備蓄の家は災害発生時や非常時において、自宅に戻るまで、または仮設住宅に移動するまでの仮の家の新しい姿です。日々の生活で慣れ親しんだ場所は、人々が混乱時でも安心して集まれる場所となり、少なくともここに来れば有用な道具や情報を手に入れることができるという安心を住民に与えることができます。

「非常時に風雨から身を守り、体を休める場所としての備蓄の家」

非常時には数世帯が寄り添って数日間生活ができるだけのスペースをこの備蓄の家には計画しています。棚の間に仮設の床を張り、床面積増やし一人でも多くの人を受け入れられるように建物を変形します。カフェの暖炉は非常時でも人々を暖め、備蓄の薪で火を起こすことで簡単な調理もすることができます。人々が力を合わせ、寄り添うことができる場となることを目指しています。

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長澤剣太郎氏との共同提案です。

(2012年10月)