江戸時代より温泉保養地として栄えてきた函館市「湯の川温泉」とその街並みの再生をテーマとした設計競技の提案です。ハコダテ☆ものづくりフォーラム主催のこのコンペでは、周辺の商店街を含めた温泉街を活性化させるための「きっかけ」となる「なにか」を建築を通し提案することが求められました。
「回遊のコア」を通って人々が湯の川の町に繰り出してく、そんなストーリーをこの作品にこめました。湯の川では、足湯、旅館など温泉に触れる事ができる「場」が点在しており、提案では、これらを結ぶ「町をぶらっと歩くための仕組み」を検討しました。まず大通り沿いに散在する空き家を創作活動の場としてアーティストに解放することにより、町の活性化と観光客の回遊のポジティブな動機を創りだします。そして、温泉とアートとの接点として、当該敷地に「回遊のコア」を設置し、浴衣貸し出しサービス、カフェ、中庭、さらにギャラリースペースを併設しました。このギャラリーではアーティストの作品と共にデジタルネットワークを通しリアルタイムで創作風景を見学することができます。
建築は「慣れ親しんだ素材や構造で特別な空間を創造する」をコンセプトにデザインしました。大屋根は町の核としてふさわしい風格を表現し、建築内部に高低差をつけることで町から建築、建築から町へのつながりとリズムを強調しています。
本プロジェクトでは、プログラムもさることながら、魅力ある建築デザインによってのみ引き出される説得力や、その空間が持つ可能性を信じてデザインを行いました。
長澤剣太郎氏との共同制作です。
(February 2012)