“ハイムもりのはら” (AM邸)は、上下階に分かれた2住戸で構成される小さな賃貸物件です。2020年の春、福寺公園すぐそばの住宅街に竣工しました。もともとは、上の写真に向かって右側の土地と合わせた一つの敷地でしたが、土地を半分ずつ相続されたご姉弟の、お姉様は弊所に、弟様は大手ハウスメーカーさんに、それぞれ2住戸のアパートの設計を依頼されたという経緯がありました。全く同じ敷地条件とプログラムを持った2つのプロジェクトですが、目標とする着地点の違いによって、デザインは大きく異なったものとなりました。
敷地は東西方向に細長い形状のうえ、南北方向はギリギリまで隣地建物が立っているため、明け方の早い時間と夕方の遅い時間を除き、自然光を深く建物内に呼び込むことがとても難しい条件となっていました。そこで、その対応策として取り入れたのが坪庭です。坪庭は、敷地の間口に対して奥行きの深い京都の町家などでよく見られますが、ハイムもりのはらでも間取りの中心部にこの伝統的な知恵を取り入れることで、採光条件の悪さを見事に克服した明るく風通しの良い住環境を実現することができました。
所在地 : 東京都
用途 : 長屋 (2住戸)
敷地面積 : 106㎡
建築面積 : 38㎡
延床面積 : 76㎡
構造・規模 : 木造2階建て
期間:2018-2020
1階は前庭・坪庭・後庭と3つの庭を介した同じサイズの2部屋の構成、2階は連続する船底天井が大きな特徴となっています。一般的なアパートの部屋よりも大きくシンプルな間取りとし、作り付けの収納もあえて最小限に抑えることで、部屋の使い方や家具の配置など、様々な住まい手の想像力を引き出すことができるようなデザインを目指しました。またこの物件は、将来的にお施主様が第2のご自宅として使われるとのことで、1階キッチン横の壁を取り除くことによって、ひとつの住宅としても使用できるような計画としています。
建物の正面に植えてあるのは3種類の異なるオリーブの木です。お施主様の旦那様は、台湾を中心に世界的に活躍されているランドスケープ・アーキテクトで、僕のロンドン・AAスクール時代からの親しい友人です。外構デザインは彼とのコラボレーションになります。